アブレーションablation
アブレーションってどんな治療?
不整脈の治療の一つの選択肢として挙げられます。
不整脈は、大きく分けると、
①心臓の筋肉の中に異常な電気回路があってその回路を電気が回ることで起こるもの
②心臓の一部から異常な電気興奮が出ているもの
に分けられますが、アブレーションはそのどちらにも応用可能です。
手技としては、局所麻酔の元で、首・鎖骨の下・足の付け根等を走る血管に径2mm程度の管を入れて、血管をたどり心臓の中へと進めます。
カテーテルの先端には電極と呼ばれる金属があり、カテーテルによって、心臓の中の電気の流れを記録したり、電気刺激したりすることがきます。
検査によって方針が確定したら、焼灼用カテーテルを心臓の中に進め、高周波電流を流して心臓の筋肉を温めます。
一定温度以上に上昇するとタンパク質が凝固して、心臓の筋肉が電気を伝えることができなくなるため、不整脈の発生を抑えます。
終了後は、カテーテルを抜去し、圧迫止血が終了すれば手技終了となります。
心房細動のアブレーション?
心房細動は脈がバラバラになり、時に脈拍数が多くなり、動悸の原因となったり、血液の塊が心臓の中にできてしまい、それが剥がれて飛んでいってしまうことで脳梗塞の原因となったりします。
また、脈拍が多い状態が長く続くと、心不全を起こすこともあります。
心房細動の治療として、カテーテルアブレーション治療が一般的となってきています。
心房細動のカテーテルアブレーションは、「肺静脈隔離」が最も一般的な治療とされています。
心房細動の起源となる異常な電気興奮のうち9割が肺静脈から出現していると言われており、その異常な電気興奮が肺静脈から左心房に伝わることで心房細動が起こります。
この肺静脈を左心房から隔離する治療が肺静脈隔離です。隔離と言っても切ってしまうという治療ではなく、左心房と肺静脈の境目を焼灼することで、電気が伝わらない状態にします。 この治療を受けられた方は、70〜80%の確率で心房細動が改善すると言われています。
アブレーションの種類
現在、日本では、大きく分けると2種類の方法でアブレーション治療が受けられます。1つはカテーテル(体の中に入る細い管)の先端を使って心筋を1箇所ずつ点状に加熱し治療する「カテーテルアブレーション」。もう1つは、先端に風船状に膨らむ器具をつけたカテーテルを用いて、膨らませた風船を心筋に密着させ治療する「バルーンアブレーション」です。 また、バルーンアブレーションは治療を行うエネルギーによって、心筋をレーザーで焼灼するタイプ、冷却するタイプ、高周波で加温するタイプの3種類に分かれます。
高周波で点状に加熱する方法
カテーテルの先端を心筋に押しつけて、血管(肺静脈)の入り口を高周波で加熱し、やけど状態にして、異常な電気信号が伝わらないようにする方法です。
内視鏡バルーンアブレーション
内視鏡で確認しながら、レーザーで円弧状に加熱する方法
カテーテルの中に挿入した内視鏡で心臓の中を見ながら、カテーテルの先端についた風船のように膨らむ部分(バルーン)が触れた箇所にレーザーを当て、血管(肺静脈)の入り口を円弧状にやけど状態にして、異常な電気信号が伝わらないようにする方法です。
ガスで冷やされたバルーンで冷却する方法
カテーテルの先端についた風船のように膨らむ部分(バルーン)に冷却ガスを入れ、血管(肺静脈)の入り口を凍傷状態にして、異常な電気信号が伝わらないようにする方法です
。高周波であたためられたバルーンで加熱する方法
カテーテルの先端についた風船のように膨らむ部分(バルーン)を水で満たし、高周波であたため、血管(肺静脈)の入り口をやけど状態にして、異常な電気信号が伝わらないようにする方法です。
Japan Lifelineの「よくわかる心房細動ナビ」を引用させていただきました。
合併症やリスクについて
脳梗塞:心房細動のアブレーションでは、まれに0.3〜0.5%の程度で脳梗塞が起こることがあります。
心房細動以外の不整脈については、極めてまれです。
心タンポナーデ:心臓に小さな損傷ができ、そこから血液が漏れて心臓の周りに溜まってしまい、血圧が下がります。ドレナージと言って、溜まった血液を体外に出すことで対処を行います。かなりまれではありますが、開胸手術が必要となることもあります。 穿刺部の出血:カテーテルを入れた部位から出血することがあります。大きく出血すると輸血や手術が必要になることもあります。
その他、焼灼を行う部位によって、心臓の周りの臓器(食道など)や、神経に障害を起こすことがあります。