ストレスは交感神経を刺激する
 

 現代社会はストレス社会といわれています。この社会的・精神的ストレスは怒りや緊張・不安などといった形で心理的に表出されます。ストレスはそのほか暑さ・寒さといった物理的要因や、たばこ・酒・排気ガスのような化学的要因、飢え・感染・過労といった生理的要因など生体にとって不快感を催すもの全般をさします。
 ストレスに遭遇したとき、生理的反応として脈拍上昇・血管収縮・血圧上昇が現われます。同時に、活動に備えるエネルギーとして糖分が血液中に増加します。これら一連の生理反応がストレス反応と呼ばれる物です。
 要は、運動していないにもかかわらず激しい運動をする際と全く同じ生理的反応が起きている状態と考えて下さい。精神的緊張や不安が慢性化すると、こうした一連の生理反応も慢性化します。ストレス反応は脳が刺激を受けて自律神経系の交感神経を興奮させることで起こります。



 この自律神経系には生体を緊張させ活動性・戦闘性を高める交感神経と、生体を休息に導く癒し系の副交感神経とがあります。ある意味では適度なストレスと癒しを繰り返すことが、自律神経のバランスを程よく保ち、健康生活を続ける上で大切です。別の表現をすれば、車のアクセルとブレーキの関係にも似ています。交感神経がアクセルに相当し、それに対して抑制する副交感神経がブレーキです。どちらが欠けても車は安全に動かせません。だからシーソーのような関係でもあるわけです。
 「ストレスは交感神経を刺激する」とストレスが悪者のようにタイトルに書きましたが、ストレスが適度にあってこそ「癒し系」の副交感神経も活性化するわけです。したがってストレスが少なすぎると交感神経、副交感神経の反応が退化します。

適度なストレスはあったほうがいいが、ストレスは貯めない方が良いといったところでしょう。



交感神経と循環器病の関係

高血圧症
 交感神経が興奮すると副腎髄質・神経終末部からアドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されます。それらが血管収縮・心拍数増加、さらに血圧上昇を起こします。交感神経は朝方に活性化するので、高血圧の半数の方には早朝に高血圧が見られます。

虚血性心疾患
 一日の自律神経の変動を見ると、昼は活動型の交感神経が優位、夜は休息型の副交感神経が優位になります。交感神経は早朝から活発になるため、特に午前中に冠動脈の収縮が起こりやすく、虚血性心疾患すなわち狭心症や心筋梗塞を発症したりします。また血栓ができ易くなり心筋虚血を起こしやすくなる原因のひとつともなります。

不整脈
 交感神経が興奮すると心臓の電気的性質の変化や、心筋内の異常興奮の出現から不整脈がおきやすくなります。不整脈には突然死と関連するものもあります。

糖尿病
 糖尿病は動脈硬化の危険因子ですが、交感神経の興奮により活動に備えるエネルギーとして糖分が血液中に増加します。精神的ストレスは血糖低下作用のあるインシュリンの働きを弱め、糖尿病の血糖コントロールを悪化させます。

循環器病と過労死
 急性心筋梗塞・脳卒中・不整脈などで急に死亡する「突然死」は医学用語ですが、「過労死」は社会学用語です。「過労死」は過重労働が引き金となり、高血圧や動脈硬化等の基礎疾患を急激に悪化させた結果、脳血管障害・虚血性心臓病・急性心不全などを引き起こし、生涯労働不能あるいは死亡に至る状態とされています。
 循環器系の病気の危険因子でもある喫煙・過剰飲酒・不規則なあるいは偏った食事等の色々な悪い生活習慣により動脈硬化が進行し、ここに過重労働が加わると、いわゆる過労死を招きやすくなります。

A型行動性格
 まじめで几帳面で責任感が強く、何ごとも徹底的にやらないと気がすまないという徹底型・完ぺき型人間はA型行動性格、反対にのんびり型・マイペース型はB型行動性格と言われます。
 人間の行動パターンと虚血性心疾患の発生との関係を調べた研究によると、虚血性心疾患ではB型よりもA型行動性格人間の方に圧倒的に多いとのことです。A型人間は、ストレスもたまりやすくなります。
 あなたの行動性格は何型ですか?時には仕事を忘れてストレスで傷んだ心身を癒すのも大切です。規則正しい食事、十分な睡眠、適度な運動や仕事を忘れさせる趣味の時間は全てストレスで傷んだ心身をリフレッシュする作用として働きます。



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