失神は一過性の意識消失により筋緊張低下のため立位の保持が困難となる状態です。 むずかしい話ですが意識を司るものは何かといいますと、脳の中心にある脳幹に存在する脳幹網様体という構造物で、ここから大脳全体を活性しています。 何某かの理由で脳への血流低下により脳幹網様体の電気活動が落ちると、意識が低下し失神するわけです。 失神発作の原因 失神をおこす病態として大体次の3種類が考えられます。 1.心臓疾患に由来する場合 心臓自体に原因がある場合、不整脈・心筋梗塞・狭心症などにより心臓のポンプ機能が低下して脳血流が減少し失神発作が発生します。 2.脳幹部への血流障害によるもの 脳幹への血流障害はほとんどの場合は脳幹を環流する血管自体に異常がある時に出現します。 動脈硬化病変により血管が狭窄していると血流低下が発生して意識が悪くなります。 3.自律神経調節異常 これは神経調節性失神とも呼ばれます。私たちの体は無意識のうちに血管の収縮や拡張が自律神経によって行われていますが、うまく機能せずに血管が拡張してしまうと血圧が突然低下してしまい失神が起こります。 血管の緊張性は交感神経と迷走神経のバランスの上に成り立っています。 車にたとえるとアクセルに相当するのが交感神経で、緊張により血圧・脈拍を上昇させます。この交感神経が緊張状態の時には、血管は収縮傾向にあります。 もう一方の迷走神経は副交感神経とも呼ばれ、車のブレーキに相当して、アクセルと逆の作用、すなはち血圧・脈拍を下げる作用を表します。 この失神は交感神経亢進状態の後に病的な血管迷走神経反射が誘発され血圧と脈拍が急激に低下し、意識が消失します。 このようなことが発生する状況にはいくつかあります。 強い精神的ショック・不安・痛み・極度の疲労などにより自律神経のバランスがくずれ血管が拡張してしまい血圧が低下します。 排尿後に失神が起こることがありますが、これは膀胱が充満していると反射性に血管収縮がおこり、次いで排尿により血管が拡張するのですが、自律神経の反射のバランスがくずれていると、血管の拡張が強すぎて血圧が下がってしまい失神してしまいます。 また、起立性低血圧を持っている人も突然立ち上がることにより、意識消失することがあります。 対処法 いずれの場合も対処法としては頭部を下げて寝かせ、衣服をゆるめ、顔や頚部に冷たいタオルをあてれば血圧がもどり意識は回復してきます。 転倒による外傷以外後遺症を残さないでので今までは原因不明として扱われて経過を看ていましたが、時に長時間にわたり心停止を来す例もあり、今ではチルト試験(起立ベットでの起立試験)等により積極的に診断され治療が試みられています。 失神発作自体はすぐに意識が回復して正常に生活できますが、大事なことは原因にあります。 心臓や脳の血管に異常があるときは次に大きな病気がおこる可能性があります。失神がおきたら必ずかかりつけ医に相談してください。 |
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