睡眠を科学する
 
人生の1/3を占める睡眠
 通常、一生の1/3は眠っていると言われます。
 この睡眠は大きく「レム睡眠」と「ノン・レム睡眠」の2種類に分類されますが、健康な人は、一晩に約90分周期で、レム睡眠とノン・レム睡眠を繰り返しています。



レム睡眠とは?
 夢を見ているときの睡眠と言えばわかりやすいでしょうか。
 脳波的には浅睡眠に近く、大脳活動は覚醒に近い状態で、急速な眼球運動(rapid eye movement:REM)の出現・筋緊張の低下(上気道閉塞を起こしやすい)・反射活動の低下・呼吸循環などの生理機能の動揺を特徴とした特殊な睡眠とされています。

ノン・レム睡眠とは?
 最も浅いまどろみ状態のstage1からぐっすり熟睡したstage4に区分され、stage1・2を浅睡眠、stage3・4を深睡眠、或いは徐波睡眠と呼びます。「レム以外の睡眠」という意味で、いわゆる安らかな眠りです。

生命を維持する最低限度の睡眠時間は?
 あくまでも理屈の上では最低限度の睡眠時間は上述した1周期にあたる90分となりそうです。
 1周期目で生理的に必要な睡眠のほとんどが確保され、2周期目以降の睡眠がその満足度を決定すると考えて間違いなさそうです。
 でも、本当にそんな短時間睡眠で生活可能なのでしょうか?

3時間睡眠で人は生きていける?
 ナポレオンやエジソンが、1日3~4時間しか眠らなかったという話は有名ですが、真実なのでしょうか? 
 そんな疑問に対する解答は、「ロングスリーパー」と「ショートスリーパー」という言葉にありそうです。

最適睡眠時間は遺伝的要素などによって個人差がある!
 睡眠時間には生まれ持った個人差があり、遺伝的な影響によって違いがある事を理解して下さい。
 一般的に、1日の睡眠時間が6時間未満で平気な人を「ショートスリーパー」と呼び、1日の睡眠時間が9時間以上必要だという人を「ロングスリーパー」と呼びますが、それぞれ人口の5~10%程度とされています。
 ちなみに残りの8割は、約6~9時間を最適睡眠時間とする人たちで、「バリュアブルスリーパー」と呼ばれますが、これが最もふつうの人と思われます。そのため、理想の睡眠時間=8時間という概念が生まれてしまったと考えます。
 ところが、8時間睡眠が本当に理想的であるかどうか疑問を抱かせる研究結果が日米に存在するのです。

7時間寝る人は8時間寝る人より長生き?
 40歳から79歳の日本人男女約10万人を対象にした調査で、死亡率が最も低かったのは、男女とも睡眠時間が7時間と答えたグループ。
 男女とも睡眠時間が減少するほど、あるいは増えるほど死亡率が高くなり、従来言われてきた理想的睡眠時間である「8時間睡眠」は、7時間睡眠に比べて、男性で11%、女性23%それぞれ死亡率が高いという結果が出たとのことです。
 米国の類似の研究でもほぼ似たような結果が得られたとのことで信頼性は高そうです。

「眠気テスト」で自分の最適睡眠時間を知ろう!
 ロングスリーパー・ショートスリーパー・バリュアブルスリーパーがいることがわかったところで、自分がどのタイプなのか知りたくなりますが、正しく知るには、深部体温や脳波の検査などをしなければならず、調べるのは困難。
 そこでご紹介したいのが、「Epworthの眠気テスト(ESS)」。
このテストによって、睡眠不足度がわかるので、現在の睡眠時間が適切かどうかを知ることができます。


 合計点数はESSスコアと呼ばれ、10点以下が正常とされています。
 このテストの評価方法は「睡眠時無呼吸」の頁で説明しています。

 ナポレオンやエジソンのようにショートスリーパーとして後世に知られるような偉人もいれば、彼の有名なアインシュタインは超ロングスリーパーだったそうです。
 つまり、睡眠時間と能力にはあまり相関関係はないので、どのタイプの人でも、何よりぐっすり眠れているかが重要です。





©2004- Michihiko Aoyama all rights reserved.

GoToTop