ニトロ製剤の正しい使い方
 
薬のききめ
 ニトロペン錠、ニトロール錠、ニトロールスプレーおよびミオコールスプレーは、いずれも狭心症の発作を止める薬で、これらの薬を総称して硝酸薬といいます。
 心臓の薬の代表ですが狭心症の発作時以外には役に立ちません。
 狭心症は、心臓の筋肉(心筋)を養っている冠動脈に狭い部分(狭窄)が生じて心筋が必要とするだけの酸素が供給されない状態です。
 硝酸薬は、冠状動脈を拡張させ、心筋への血液の流れを良くします。
 同時に、全身の静脈を拡張させ、そこへ血液をためて心臓へかえってくる血液の量を減少させ、血液を押し出すポンプとしての心臓の動きを小さくして負担を軽くします。
 さらに、全身の動脈も拡張させて血圧を下げて、心臓の負担を小さくします。
 これによって心筋へ送られる酸素が増加し、また心筋で使われる酸素も少なくて済むため、狭心発作の原因である心筋の酸素不足を解消します。

重要な注意事項
勃起不全治療薬クエン酸シルデナフィル(バイアグラ)、塩酸バルデナフィル(レビトラ)は絶対に使用しないで下さい。また、海外ではすでに類似薬で心臓への影響がより少ないとされる薬剤も出てきています。日本国内で入手可能となる日も遠くはないと思います。


使用方法
舌の下でとかす薬(舌下錠)
 ニトロペン錠
 狭心症の発作が起きたり、発作が始まりそうになったら、安静にして1錠だけ舌の下に入れて溶かして下さい。口の中の粘膜から吸収されて効果を現す薬ですので、飲み込んでしまうと効きません。また、口の中が乾いていて溶けにくいときには水を一口飲んでから溶かすと良いでしょう。
 ニトロール錠
 ニトロール錠もニトログリセリン錠と同じく、狭心発作の治療や予防に使います。この薬は、飲み込んでも効果があります。しかし飲み込んだときには、その効果は15分以上たたないと出てきません。発作時にはニトログリセリン錠と同じように舌の下に入れて溶かして使います。早く効かせたいときは、錠剤を口の中で噛み砕いて舌の下で溶かすと良いでしょう。


口の中に噴霧する薬
 ニトロールスプレー・ミオコールスプレー
 保護キャップをはずしてください。初めて使用する場合は噴霧栓をニトロールスプレーは2~3回、ミオコールスプレーは6~7回、押して空噴きしてから使用して下さい。空噴きをしないと十分な量の薬が出ません。また初めて使用するのでないときでも、ニトロールスプレーは3日以上、ミオコールスプレーは1ヵ月以上間隔をあけて使用するときは、1回空噴きしてから使用してください。
十分な量の薬が出るよう容器を立てた状態で持って下さい。寝て使用するときは、体を少し起こしてから使用して下さい。寝たまま使用すると十分な量の薬が出ません。
噴霧口を口から約2㎝に近づけ、口を開けたまま息を止めた状態で、噴霧栓を力強く押して口の中に噴霧し、すぐ口を閉じて下さい。30秒位唾液(つば)を飲み込まない方が効果がよくあらわれます。 使用後は再び保護キャップをして下さい。


使用上の注意
 硝酸薬は血圧を少し下げる働きがあります。普通は何ともありませんが、ときには血圧が下がり過ぎて、気分が悪くなり、めまいやふらつきがでることがあります。
 血圧が下がり過ぎたときの用心に、硝酸薬を使うときは立ったままでなく、座った姿勢で使うと良いでしょう。
 とくに、初めて硝酸薬を試すときには座って使って下さい。血圧が下がり過ぎて気分が悪くなったときには、枕をしないで横になって、下肢を高くしておくと、20分ぐらいで楽になります。道路上などで横になれないときには、しゃがんで前かがみになって、頭を低くしてみて下さい。
 硝酸薬を取りに行く動作そのものが、狭心症をさらに悪くしますので、昼間は身につけておいたり、夜は枕元など届く範囲において、いつでも使えるようにしておきましょう

薬の効き始める時間と効果の続く時間
ニトロペン錠
 舌下に含んで1分ほどで効き始めます。効果は30分ほど続きます。
ニトロール錠
 舌下に含んで2~3分ほどで効き始めます。ただし、かみ砕いて使うと1~2分で効き始めます。効果は60分ほど続きます。
ニトロールスプレー・ミオコールスプレー
 噴霧して1分ほどで効き始めます。効果は60分ほど続きます。

効果がなかった時
ニトロペン錠
 1錠使用して3分ほどたっても良くならないときには、もう1錠追加してみて下さい。さらに3分ほどしてもよくならないときはもう1錠、3錠目を試して下さい。
ニトロール錠
 1錠使用して5分ほどたっても良くならないときには、もう1錠追加してみて下さい。
ニトロールスプレー、ミオコールスプレー
 1回噴霧して3分ほどたっても良くならないときには、もう1回噴霧して下さい。ただし3回以上は使用しないで下さい。

それでも胸痛などの症状が15分以上続くときには、とくに重い狭心症または心筋梗塞症になっている可能性があります。直ちに主治医に連絡するか、近くの救急病院に運んでもらって下さい。

保管方法
 ニトロール錠とニトロペン錠は通常の薬剤と同じ保管法でおおよそ2年くらいは有効ですが、あまり時間が経過した場合は主治医に処方してもらいましょう。
 ニトロールスプレー、ミオコールスプレーは保護キャップをした状態で室温で保管し、捨てるときは火中に投下しないで下さい。
 また、すべての硝酸薬は直射日光を避け、高温になるところにも置かないで下さい。また、小児の手の届かない所に保管して下さい。


副作用
 心配な副作用はほとんどありません。
 蓄積されて副作用を起こすということもなく、習慣性もありません。
最も多い症状は、一時的な頭痛ですが、次第に慣れがでてきて頭痛は起こらなくなります。しかし、頭痛がひどいとき、症状が続くときは、主治医にそのことを話して下さい。
 その他、顔や全身の紅潮、ほてり、悪心、嘔吐、頻脈なども同様です。

予防薬として
 硝酸薬は狭心症発作の予防にも使用できます。
 過去に起こった発作の原因と考えられる精神的ストレスや肉体労働、狭心症を起こしやすそうな運動をしなければならないときは、その前に1錠を舌下に含んでおくと良いでしょう。
 ニトロールスプレー、ミオコールスプレーは1回口の中に噴霧しておくと良いでしょう。

その他
 硝酸薬を使用した日付、時間、状況とその効き方を、また予防的に使用した場合もメモを残し、次の診察日に主治医に報告すると治療に役立ちます。
 発作の回数が増えてきたとき、あるいは、硝酸薬の効きが悪くなったときには、早めに主治医に連絡して下さい。
 硝酸薬は確かに狭心症には特効薬ですが、万能薬ではありません。
 一言で心臓病といっても狭心症以外にも色々な病気があります。病気の種類によっては硝酸薬を使用することでかえって症状が強くなる場合もあることに注意して下さい。





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